生涯一放射線科医の日記

~昭和・平成・そして令和~

ラジエーションハウスの感想(1)


ラジエーションハウスも最終回が終わりました。視聴率もよかったようです。私の周りでは小学生のような小さな子供が喜んで見ているという話を聞きました。放射線技師、医師の仕事に興味を持ってくれるとありがたいです。視聴率が良かったせいか
来週特別編があるようです。

少し感想を書いてみたいと思います。 

放射線診断医は画像の読影で忙しい。PACSで送られた画像をモニターで 読影するのが仕事であり、画像がどのような過程で作られているのを考えることが少ないように思います。 

ラジエーションハウスは、画像を撮影したものが(患者さんの状態、痛みがどこにあるかなど知って)画像診断をするという設定でした。患者さんを直接をみて撮影し、直ちに画像診断を行う。患者さんの息止めの状態、動きによるアーチファクト、装置の不良による偽画像の有無、再撮影の必要性など判断しながら画像診断します。ドラマでは技師(本当は医師)の判断で追加検査や追加撮影がされていますが、現実には担当医と連絡なしには行うことはできません。

モニターの前に座って患者さんの実際の状態を知らないまま読影する画像診断医とはやはり違うように思います。しかし、読影する者が撮影するというのは、理想的かもしれませんが、膨大な検査を数少ない放射線科医で行うということは現実的にはあり得ない話です。では放射線技師が診断すれば、という話になりますが医学部6年間、解剖、生理学、病態、各科の疾患について勉強した医師と技師では診断力に大きな差があります。骨折や〇〇があるかないかについては技師でも問題ないとおもいますが・・・。

検査を放射線科医が行うものとして、いまや数少ない施設でしかありませんが、超音波検査(エコー検査)があります。超音波検査では直接患者さんと話をし、症状を聞き、カルテ、それまでのCTやMRI画像を参照して検査、診断します。これは、放射線科医以外の医師、さらに放射線技師、臨床検査技師にはまず無理なことです。
かつて胃透視や大腸注腸検査がそうでした。検査するものの腕により診断レベルが違います。技術そして知識の差がでます。今や胃透視は放
射線技師に、超音波検査は臨床検査技師に任せる時代になってしまいました。スクリーニング検査はまかせるとして、精密検査での超音波検査(もちろんスクリーニング検査ができる腕が必要ですが)を 放射線科医が行わないのは非常に残念です。

また、かつてのMRI診断第一世代の先生方は自分でマシンを操り、撮像法について考え、画像の成り立ちを考え、診断に応用していました。 MRIのパラメータを自由に操ることができればなんとMRI診断も楽しいことになるでしょう。

さて、現在はどうでしょうか。画像の良し悪しはほとんど技師たよりです。MRIの撮影法、パラメータについても技師任せになっています。

 画像診断医はトレーニング時代に放射線技師の仕事の現場を知っておく必要があります。患者さんの状態、撮影の上手下手で画像に違いがでること、撮影条件による画像の変化、造影剤の投与方法など、現場を知らねばなりません。

放射線診断医を志す若い先生方は、撮影現場に足を運び、技師さんとよいコミュニケーションをつくり、撮影の現場、画像成立の過程を知って欲しいとおもいます。 

ラジエーションハウスはより良い画像診断医になる道を教えてくれたドラマだと思います。 

 

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この写真は診断するのによい写真ですか?

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正確な診断をするためには画像処理が必要です。画像を提供する放射線技師が、正確な診断のためにどんな画像が必要がしっていなければよい画像が診断医に提供されません。放射線技師と医師のコミュニケーションが大切です。