生涯一放射線科医の日記

~昭和・平成・そして令和~

最近の優秀な放射線診断医

放射線科診断医、私達の時代はカンファレンス、他の科の先生と話をして各科の臨床情報そして新しい知識を仕入れていた。いろいろな先生にいろいろなことをよく聞いて耳学問をしていた。自分は画像診断の勉強で手一杯で、検査のことや治療のことまで勉強する余裕はなかった。少ししか書かれていない臨床情報からレポートを書いていた。臨床データは病棟に紙カルテを見に行くしか方法はなく、画像の読影に検査データや病歴などの臨床情報を加味して考えることは少なかった。
そのため、レポートには鑑別診断を書いて、「臨床情報と対比して検討ください」と書いていた。とくに仕事が忙しかったりすると深く考えず、逃げ口上のように鑑別診断を列挙すればよいのでとても楽だった。肺に浸潤影があれば、肺炎と思いますが、炎症所見がなければ肺胞上皮癌も考慮くださいとか、書いていてもつまらないレポートだった。気持ちとしては、画像の後ろにいる患者さんの病歴、検査データをしってレポートしなければ放射線診断医としての役割をちゃんと果たしていないと思っていた。
 
新人の研修医が、数少ないレポートしか書かないのに、そんなレポートを書いていたら怒っていた。「自分の親、家族を見るつもりでレポートをかけ」と。病棟に行ってカルテを見てこいと。症状、臨床所見をすべて知ったうえでレポートするのが、放射線診断医の仕事だと。
 
今でも、仕事が忙しいからとい言って依頼内容だけでレポートをする医師がいる。とんでもないと思う。電子カルテで患者情報はすぐ見れる。(ちゃんと書かれていないカルテがあるが、それは主治医が悪い。経過、問題点がはっきりしない、誰にでもわかるように書かれていないカルテは主治医が悪い。そういう医者には適当なレポートしか送れない)
 
主治医のつもりで画像診断のレポートを書くのが今の放射線科診断医の仕事だとおもう。カルテを見るのは当然と思う。時に各科の医者の中に、画像診断する医者がカルテをみたりするのはカンニングみたいだという医師もいるが、我々はクイズに答えているわけではない。患者さんのために仕事している。
 
さて、いまの時代の画像診断医は、卒後研修により診療の現場を経験している。臨床情報の理解、検査データの解析など我々の時代とは違ってよく勉強している。基本的な治療法もよく知っている。うらやましい限りだ。
 
ということで、彼らが画像診断をするときカルテをみると、おおよその臨床所見、データについて判断できている。カルテに問題点が書かかれてあるのでほとんど主治医の立場で画像診断することが可能になる。今の優秀な画像診断医は、画像診断側から考えて、臨床所見とあっているかどうか考えることができる。さらに、ネットで簡単にいろいろ調べることができるので、主治医が思いつかない疾患や方向性なども発見する。
 
といった具合に、彼ら新しい優秀な画像診断医は画像診断だけでなく、自分で臨床所見を解析する能力をつけている。診断力では、画像診断の能力に劣る一般臨床医より優秀だともおもう。全科にわたっての知識もあるので患者を全体で見ることができる。さらに、患者さんの画像診断の経過をみることで治療法の知識、合併症の知識を知ることができる。カルテをみれば主治医が優秀かどうかすぐわかる。
画像診断医は治療法まで具体的に調べることはないが、病気を調べると文献には治療法、合併症などの記載があるので理解している。
というのが、今の優秀な画像診断医/放射線診断医です。